月が何度も昇っては沈んでいった。
呪われた洞窟に棲みつく、邪悪な妖精たちが作り出した迷路のようなトンネルに閉じ込められ、バグパイパーはあてもなく彷徨っていた。
彼はもうすっかり諦めていたのである。身体は弱り、心も弱っていた。
周囲の超常現象を恐れて、演奏することを恐れていたバグパイパーに何の意味があるのか。そんな暗い洞窟の片隅で、冷たい岩にへたり込んでいたバグパイパーに、小さな幸運が微笑んだ。
彼は、2体の悪い妖精が話しているのを耳にした。妖精たちは怠惰なリーダーに飽き飽きしていたのだ。そのリーダーは滅多に、人間を洞窟に閉じ込めて悪霊にしようと、画策することはなかったのである。
そしてその囁くような言葉が、バグパイパーに大胆なアイデアを呼び起こした。
しばらくして、洞窟が音で揺れた。バグパイパーは大音量で演奏しながら、妖精の隠れ家に行進していった。
息も絶え絶えになりながら、バグパイパーは「自分の曲は、通りすがりの人を洞窟の中に誘い込むのだ」と説明した。
気まぐれな精霊たちは、それをうなずきながら聞き、ひとりを除いて全員がこの計画を歓迎した。こうして、投票によってバグパイパーが新しい王様になることが決まったのである。
その中に誘い込まれた、哀れな魂たちの可哀想なこと。
バグパイパーの心は闇に包まれ、やがて見違えるようになった。
音楽の持つ禍々しい力によって歪められた人間の姿。
最初は見知らぬ人だけが曲に惹かれた。その後、地元の人たちでさえ、その凄まじい脅威に抗うことができなくなった。犬を連れた一人の村人が洞窟に入るまでは。
この犬はかつて、バグパイパーの忠実な猟犬だった。そして、今や凶悪となった王との再会が、邪悪さを解除したのである。
突然、復活したバグパイパーは、人類を救うために何をすべきかを悟った。彼はバグパイプを手に取り、雷のような音で演奏し始めた。
やがて洞窟は崩れ、邪悪な妖精たちは閉じ込められてしまったのである。