静岡県産ミズナラ樽完成、静岡大麦原酒の樽詰めを公開決定!

希少な静岡県産ミズナラを使用した静岡蒸溜所オリジナルの樽が、3年越しで完成しました!
今回、この樽に静岡県産大麦を100%使用した原酒を詰め、究極の「100%静岡ウイスキー」樽詰めの様子を特別公開することとなりました。貴重な瞬間にぜひお立ち合いください!

ミズナラの林(参考)

ミズナラはジャパニーズオークと呼ばれる日本固有の種です。高級家具材として使用されるものの、曲がり木が多く樽にするには多くの技術が必要となります。希少なミズナラ樽で熟成したウイスキーは、お香や伽羅のような独特のオリエンタルな香りと味わいで、世界的に絶大な人気を誇ります。

主に北海道の高標高の冷温帯地域に自生するミズナラは、その名の通り水分を多く含み、曲がりながら成長します。年輪に大きな道管が通っており、柾目面に独特の虎柄の模様となって現れることから、世界中の家具市場から人気を集める木材です。近年、独特の香味で樽材として注目を集めていることから、より希少な材となっています。
うねりながら道管が通っているため、樽にした場合は非常に水漏れがしやすいと言う特性があります。そのため製材や製樽には時間と技術が必要となります。

静岡は林業の盛んな県で、県土の2/3を多様な森林が占めていますが、その中でも樽材に適したミズナラはあまり多くありません。地元産原材料を用いたウイスキーづくりを目指す静岡蒸溜所は、県産の木材での樽づくりも当初から視野に入れており、直火蒸留の薪や発酵槽用の材木の供給を受けている静岡市内の玉川きこり社に依頼して、ミズナラ材を探し続けていました。
そしてついに富士山にほど近い森の中に、樹齢を重ねて十分な太さのあるミズナラが発見され、前例のない富士山ミズナラ樽プロジェクトが始まりました。

【製材】

2022年1月、切り出した木材の製材が始まりました。丸太の状態から板材へ製材するのは、同じく市内の亀山製材所です。地元の木の状態、木目や節などを調べながら樽材へ加工していきますが、やはり樽材になるようなまっすぐな目の板を切り出すのは至難の業でした。

製材してからも、自然環境で1年以上天日干しすることで強すぎるタンニンなどのアクを抜き、乾燥させなければなりません。特にミズナラはその名の通り水分を多く含むため、十分な乾燥期間が必要でした。ウイスキーは熟成に時間を要することで知られていますが、樽づくりの時間、そして木が育つまでをも考えると、人の一生と並ぶほどの長い時間をかけた贅沢なお酒であると言えるでしょう。

【製樽】

2024年になり、ついに樽への加工が始まりました。製樽は、日本の樽製造を一手に担う有明産業
宮崎県の工場で作業が行われました。
ミズナラは水分を蓄える性質上多孔質で、水漏れしやすいという特性も持ち合わせています。樽に加工する際には、組み上げながら何度も水漏れのチェックを重ね、細やかな修正をしながら完成させます。そのため、通常の樽の倍以上の工程と時間が必要になります。

赤い線が入っているのが、水漏れをしている板です。
こちらは水漏れの検査をしている貴重な動画。樽に水を張ると、隙間だけでなく木目の部分からもじわじわと染み出しているのがわかります。


プロジェクトの進行

2020年 富士山の近くで樹齢を重ねたミズナラの原木を発見(玉川きこり社)
2022年1月〜2024年3月 ミズナラの製材、タンニンなどのアク抜きのための乾燥(亀山製材所)
2024年4月 製樽・水漏れの確認(有明産業の宮崎工場)


【ついに完成、静岡蒸溜所へ】

こうしてようやく完成した初の富士山ミズナラ樽は、3挺のみ。バット(450L)が1挺、ホグスヘッド(250L)が2挺です。10本ほどの木を切り出した木材の量からすると少ない数ですが、ミズナラを樽材にすることの難しさが感じられます。

今後、富士山のミズナラ材が入手できる目処はないため、この3樽は非常に稀少な樽になります。

現在、世界中で大麦を原料としたシングルモルトウイスキーが造られていますが、大麦の産地を明言する蒸留所はわずかです。原産地は味に影響しないとしてアルコール収率が高い品種を使用するのが主流ですが、小規模蒸留所を中心に、原産地を地元または国内産を使用する流れが起こっています。

静岡蒸溜所では製造を開始する以前から「静岡でウイスキーを造るなら、原材料をすべて静岡産にして造りたい」という思いがありました。その熱意に地元農家や組合が賛同し、静岡での大麦づくりという挑戦が始まりました。

2016年、蒸溜所近隣の玉川地区桂山および富士宮で試験的に栽培・収穫した大麦を使用したことを皮切りに、2019年から焼津市の3軒の農家と協働し、本格的に栽培を開始。焼津市での大麦栽培は初めてのため、JAおおいがわ、静岡県経済農業協同組合連合会、静岡県農林技術研究所の協力を得て、2020年5月に初めての収穫を迎えました。品種は「サチホゴールデン」。国内での品種改良によって誕生した二条大麦品種です。

以来、米の裏作として大麦を秋蒔きし、翌年5月頃に収穫するサイクルが定着。栽培のノウハウが蓄積するにつれ収穫量が安定し、作付面積も拡大したことで、年を追うごとに収穫量は増大しています。品種は最新の「ニューサチホゴールデン」に変わり、2023年度には静岡蒸溜所の年間生産量の約2割が県産大麦での仕込みとなっています。

今年は豪雨や気候不順などもありながら、見事な大麦が収穫できました。この大麦を製麦し、静岡蒸溜所に麦芽となって到着するのは秋。例年11月頃に仕込みが行われます。

酵母】

「100%静岡ウイスキー」は、原料と樽だけが県産ではありません。通常、ウイスキーづくりにおいては産地が重視されることのない酵母も地元産です。
沼津工業技術支援センターで、ウイスキーやビールの麦芽の発酵用に開発された酵母を使用しています。全国新酒鑑評会でも高く評価される日本酒用酵母「静岡酵母」を開発した同センターに、麦のための酵母を開発していただきました。静岡県産のスギで造られた発酵槽で、この酵母を用いて発酵させています。

仕込水】

蒸留所の傍らを流れる安倍中河内川、その伏流水を敷地内の井戸から汲み上げて使用しています。安倍中河内川は、静岡市の生活を支える安倍川の水系で、良質な水質で知られています。

水質は中硬水で、出来上がるウイスキーは香り豊かで上品なウイスキーになると言われています。

【燃料】

蒸留でも、地元産の原材料が活躍しています。国内唯一、世界でも希少な薪での直火蒸留機は、静岡の森で伐採された間伐材を燃料にするために誕生しました。

健全な森林を保つために、密集した木々を間引きすることで間伐材が生まれますが、杉の間伐材はあまり用途がありません。地域の自然保護を担う株式会社玉川きこり社が、日々山を管理する中で生じた間伐材を、蒸溜所の敷地内で薪割り、乾燥させて使用しています。

これは、再生エネルギー事業をルーツに持つガイアフローが、燃源を海外輸入に頼らないウイスキーづくりをするという画期的な発想によるものです。

800℃にも及ぶ高温で蒸留された原酒は、ほのかな香ばしさやリッチなボディ、芳醇さが特徴です。

唯一無二の味わいに仕上げるために熱源にも地元産材料を用いるという、世界的にも類を見ないこだわり。森林の健全な成長を促す活動の一端を担いながら、静岡のテロワールを体現する原酒を生み出しています。

このような地元産原材料を使った「100%静岡」ウイスキーの第一弾として、2023年11月下旬「ガイアフロー シングルモルト日本ウイスキー 静岡プライベートカスク ディスティラリー・リザーブ Cask No. 835 100%静岡大麦 exバーボンバレル 5年」をリリースしました。

当商品は2018年に蒸留した最初の静岡大麦のウイスキーで、1樽分だけをボトリングしました。
2019年以降も毎年静岡大麦での仕込みを行っており、原酒の状態を見守りながら熟成を続けています。今後より多くの方々に楽しんでいただけるよう、地元生産者と協働し増産を目指しています。

今回の静岡県産ミズナラ樽は、この「100%静岡」プロジェクトの第一段階の集大成と言える試みです。熟成に最低3年以上の年月を要しますが、世界のウイスキー界でも革命的な「あらゆる材料に地元産を使用したウイスキー」の誕生まで、国内外から熱い視線が注がれることは間違いないでしょう。

静岡県産ミズナラ樽にオール静岡原酒を樽詰めするという記念すべき瞬間に、静岡蒸溜所ファンのみなさまに立ち会っていただきたく、通常は非公開の樽詰工程を11月11日、13日の2日間限りで特別公開いたします。

参加方法
静岡蒸溜所ツアー オンライン予約ページにて以下の日程にてご予約ください。
(1) 11月11日(月) 11:00スタートのツアー
(2) 11月13日(水)13:45スタートのツアー

これまで蒸溜所見学をされたことがある方も、初めてという方も、思い出に残る1日となること間違いなしです!
※参加費は通常通り(1,100円/税込)です
※同時に報道関係者による取材が行われる可能性がございます
※樽詰め工程公開は上記2回のツアーのみとなります。日程にお間違いのないようお申し込みください。

みなさまのご参加をお待ちしています!
→大勢のお客様にご来場いただき、ありがとうございました。

当日の様子は、下記のレポートをご覧ください。

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