地元農家さんとの協働で実現した、過去に例のない静岡県産大麦100%シングルモルトウイスキー。この完成を静岡県知事に報告する会が、2024年3月26日(火)に開催されました。英国留学時代にウイスキーに親しんだという知事、県内の大麦づくりやジャパニーズウイスキーブームの話題まで広がった会談の様子をレポートします!
「100%静岡」とともに県庁へ!
2024年3月26日、静岡市内は季節外れの寒さと激しい雨で、桜はまだ蕾を固く結んだまま。しかし駿府城からお堀を挟んだ向かい側の静岡県庁では、にぎやかで笑顔に満ちた時間が訪れていました。
この日は、ガイアフロー静岡蒸溜所代表 中村大航と副社長 中村美香だけでなく、大麦生産者のみなさま・JAおおいがわからご協力いただいた方々にもお越しいただきました。
打ち合わせの席では、大麦栽培を開始した当初の思い出話、苦心譚でひと盛り上がり。まずは生産者のみなさまと完成品を手に記念撮影!
右手の山本さんがお持ちのボトルは、「100%静岡大麦」のボトル。実際にご自身で栽培された大麦が5年熟成のウイスキーとして商品化され、感無量!とのこと。
左手の小畑さんがお持ちの小さな200mlボトルは、2020年に焼津で収穫した大麦100%のシングルモルトのカスクサンプル。3年熟成に達したウイスキーですが、まだ樽で熟成中です。そして村松さん、八木さんがお持ちのボトルは今年収穫したばかりの焼津産大麦です。
山本さんは、静岡蒸溜所が建設中の2015年から、「うちで大麦をつくったら、ウイスキーに使ってくれるか?」とご提案くださり、蒸溜所近隣の1ヘクタールの農地で栽培を開始。静岡県内では大麦栽培をしているところがなく、全く手探りの状態で始まりました。
その当時、県内のTVや新聞にもご紹介いただいたのがこちらの記事です。
2016年収穫 静岡市内産大麦
さらに本格的に、一定量の大麦を収穫するためにと力を貸してくださったのが焼津で専業農家をされている小畑さん、村松さん、八木さんでした。2019年から研究を重ねながら、少しずつ収穫量を増やしています。現在では静岡蒸溜所の全生産量の1割以上を、この3軒の生産者の方々の大麦で賄えるほどになりました。
これは、生産者の方々はもちろん、大井川農業協同組合や志太榛原農林事務所、静岡県経済産業部の方々などのお力添えがなければ実現できないことでした。
こうしたみなさまへのお礼と、最初の「100%静岡」ウイスキー完成と現在の進捗状況のご報告として、今回県知事への表敬訪問に至ったのです。
県知事とのウイスキー談義
段取りの確認と打ち合わせが終わり、いよいよ知事室へ。静岡県庁は4つの大きな建物で構成されているため、別館9階の控え室から東館の5階にある知事室を目指し、大移動です。
まずは静岡県知事 川勝平太様へ、ウイスキーの贈呈です。
そして、知事へウイスキーのご説明のため、着席します。
ここからは、対談形式で、抜粋して会談の内容をご紹介します!
知事:オール静岡ウイスキー、素晴らしいですね。これは何年もの?
中村:5年です。2015年から山本さんが栽培してくださった大麦を18年に蒸留して、2樽分仕込みました。これはその1樽をボトリングした306本のうちの1本です。
知事:貴重なものをありがとうございます。山本さん、畑はどのくらいの広さですか?
山本:1ヘクタールです。
知事:皆さんは?
八木:4ヘクタールです。
村松:私も4ヘクタールです。
小畑:うちは8ヘクタールです。
知事:素晴らしい、じゃあかなり収穫も増えていますね。
それがこの小さいボトル?これは手軽でいいですね。
中村:これはまだ3年熟成で、樽から抜き出したサンプルなんです。樽自体はまだ熟成しています。
知事:そうですか。まだまだ成長するんですね。
そういえばちょうど日経新聞にウイスキーの記事が出ていましたよ(切り抜きを持参)。
ジャパニーズウイスキーの基準厳格化、となっています。
中村:はい、国内製造などの規定はありますが、大麦の産地は規定がないんです。海外産でもいい。
しかし弊社では創業当時から国産大麦、そして県内産大麦を使用しています。
知事:いい取り組みですね。
日本食が無形文化財となって、世界中から脚光を浴びている。海外には和食料理店18万軒ある。
そういったお店で日本酒や日本のワイン、ウイスキーが愉しまれている。
静岡、富士の国は特に地元のお酒が豊富ですからね、どんどん海外にも進出してほしい。
海外の賞なんかも受賞しているのが多いですね。
中村:実はちょうど先週発表になったのですが、このウイスキーが日本一を獲得しました。
知事:それはすごい!日本一ですか。
中村:シングルモルトウイスキーのスモールバッチ、少量生産品の部門です。
日本で最優秀賞を取って世界の最終審査にも進んだのですが、そこは逃してしまいました。
しかし世界一になるのは静岡大麦でと思っています。
知事:それはぜひ実現してほしいですね!それには大麦もたくさんつくらなくちゃいけない。
価格も上がるでしょうが、今は付加価値で高くても買ってもらえるものづくりの時代です。
中村:農家さんも大麦づくりでも対価をしっかりと得られるようにと考えています。
知事:皆さんは大麦だけつくっているんですか?
八木:米と麦で、裏作で麦をつくっています。
知事:そうですか。静岡は酒米も盛んですからね。誉富士は静岡オリジナルの品種です。
静岡の気候風土に合わせて育って、風味も豊かですね。
知事:これ、アルコールはどのくらいあるの?強いでしょう。
中村:樽出しなので、62.4%ですね。こちらのポットスティルWは55%です。
知事:私がイギリスに留学していた頃、ウイスキーを飲もうと初めてバーに行ったんです。
そうしたらブレンデッドかモルトかを聞かれて。その頃は聞いたこともなくてね!
ロンドンは水があまり良くないから、割らずにストレートで飲むと教わった。
だからあの頃はストレートで飲んでいましたね。でもこんなに強いウイスキーではなかった。
中村:ブレンデッドなら、40〜46%くらいでしょうね。
知事:でしょう?なぜこれはこんなに強いの?
中村:原酒の良さをそのまま残して、あとはお好みで割って楽しめるようにと。
お好きな方はストレートで、あとはハイボールとか。
知事:好きな方はやっぱりストレートでしょうね。
私は食中酒は日本酒が多いです。県の地酒。でもこれでウイスキーも加わりました。
ガストロノミーツーリズムで地のものを楽しむ、「和の食の都」が静岡です。
生産者の皆さんと一緒に、ぜひこれからも頑張っていただきたいですね。
地元新聞社などの取材対応も
知事との会談が終わったあとは、新聞社さんなどの囲み取材へ。
こちらでも県産大麦を使用したウイスキーづくり、「これまでになかった、日本で最初の地元産大麦のウイスキー」について、質問が飛びます。
さらに控室に戻って、生産者さんを交えたインタビュー対応です。
ここでは生産者の方々から「自分の麦の行き先が見えるというのは、とても嬉しい」「蒸溜所へ実際に行ってみて、こんな綺麗なところで自分の麦がウイスキーになるんだと思ったらワクワクした」という嬉しいお言葉も聞けました。代表 中村は、「生産者さんへの感謝の思いを込めて、これからもウイスキーづくりをしていきたい」と、決意を新たにしました。
「オール静岡ウイスキー」への大きな第一歩となった「100%静岡大麦」のリリース、そしてその完成報告をお礼とともに県知事にお伝えできた、静岡蒸溜所のマイルストーンとなる1日でした。
この日の取材の内容は、こちらでご紹介します。畑から始まる静岡のウイスキーづくりに、これからもどうぞご注目ください!
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