2015年5月13日
日本経済新聞 朝刊 静岡経済面
ウイスキー生産参入
安倍川上流域で仕込み
原酒の外販も計画
酒類の輸入販売を手掛けるガイアフロー(静岡市)が市内でウイスキー生産に乗り出す。約4億円を投じて安倍川上流に蒸留設備などを整備し、来春から原酒の仕込みを始める。熟成期間中は国内外の酒類メーカーに原酒の一部を納入するなどして運転資金を確保し、2019 年にはウイスキーを発売。10年後に約6億円の売上高を目指す。
ウイスキー生産は2014年10月に設立した子会社「ガイアフローディスティリング」(同)が主体となって取り組む。玉川地区の約2000平方の敷地に7 月から製造棟や貯蔵庫などの建設に着手する。
蒸留設備は旧メルシャン軽井沢蒸留所(長野県御代田町)の設備を移設する。16年2月に完成、4月にも年間20万リットルの原酒製造を始める計画。工場長には国内メーカーでウイスキー製造に携わっていた経験のある人材に就任を打診している。
原酒を熟成する3〜5年間、原料である大麦の調達や人件費などのコストを賄うため、年間約10万リットルの原酒OEM(相手先ブランドによる生産)供給する。国内のほか欧州からも引き合いがあるという。ウイスキー愛好家への原酒販売も含め、工場稼働初年度から年間1 億円の売上高を見込む。
ウイスキー市場は1980年代をピークに若者のアルコール離れやビールやワイン人気のあおりを受けて縮小に転じ、08年には消費量は7 万キロリットルと、ピーク時の2 割以下にまで減少した。
しかし、最近では健康志向でウイスキーを炭酸で割ったハイボールの人気が復活。NHKドラマ「マッサン」ブームの追い風もあり、消費量が回復しつつある。海外でも東南アジアなどで市場が拡大している。
こうしたなかガイアフローの中村大航社長が12年、将来のウイスキー生産を視野に同社を設立。洋酒の輸入販売などを手掛けながら英スコットランドなどでノウハウを学び、県内で生産に乗り出す機会を探っていた。
蒸留所の建設地は中山間部で過疎化が進んでいた。ただ、南アルプスの雪解け水が流れている安倍川であれば「これまでの国産ウイスキーとは確実に違うものができる」(中村社長)と判断。雇用が生まれ集客の拠点として地域に貢献もできることからウイスキー生産に踏み切った。