静岡新聞 2015年11月13日 朝刊 特集面
本音インタビュー「静岡産 世界発信目指す 〜ウイスキーの蒸留所設立へ〜」
ガイアフロー社長 中村大航氏
なかむら・たいこう
家業の精密部品製造会社の代表から、ウイスキー造りを目指して2012年1 月ガイアフローを設立。静岡市清水区。46歳。
静岡市の中山間地で、国内では数少ないウイスキーの製造に乗り出す。国内市場規模はまだ成長過程にあるが、静岡産ウイスキーの海外輸出や地元農産物加工所と連携したまちおこしなど地方創生の潮流にも沿った戦略を描く。
ー会社設立は2012年。以前は部品メーカーの経営者だった。
「当初は再生可能エネルギーで新事業を考えていた。ウイスキーの本場スコットランドを訪れる機会があり、小さな工場から世界中で愛されている有名ウイスキーが製造されているのを目の当たりにした。日本では工業製品を取り巻く環境が厳しくなっているが、かつて工業が盛んだったスコットランドでウイスキーは今も主力産業として輝きを放っている。ウイスキーに時代を超える商品性を感じた」
ー現在の進捗(しんちょく)状況は。
「蒸留所建設の準備と並行して、洋酒の輸入壁先に取り組んでいる。世界の取引先との関係を強め、将来の販路を確保する狙い。将来は、地元のウイスキーを世界に発信していきたい。蒸留所は来年4 月に完成予定。その後もいろいろな手続きがあるが、初夏ぐらいに製造を始めることができれば。年間10万リットルの製造が当面の目標だ」
ー蒸留所建設地に、静岡市葵区の玉川地区を選んだ。
「スコットランドがそうであるように、ウイスキーの熟成に大切なのは風土。全国で場所探しをする中で、緑豊かできれいな空気と水のある玉川が一番気入った。静岡の風土の影響を受けた静岡らしいウイスキーができるのではないか。地元の方が原料の大麦を生産してくださる計画ある。純静岡産ウイスキーが完成した時、『玉川』は有力な商品名候補の一つだ」
ー中山間地の活性化が期待される。
「建設予定地は比較的アクセスが良いことに加え、地元住民が非常に活動的。隣接地に農産物加工所を備し、地元で採れた野菜どの特産品を販売する計がある。お酒は、作った風土の中で飲むのが一番おいしいとされる。地元の食材をつまみに酒を味わったり、製造の様子を見学してもらったり、訪日外国人もターゲットにした静岡の名所を目指したい」
(聞き手=清水支局・河村雅彦)