静岡新聞
2019年9月6日
クラフトビール 県内醸造所20カ所到達
観光の目玉期待感
県内のクラフトビール醸造所がこのほど、20カ所に到達した。このうち2018年以降の設立が7カ所と、急増傾向。関係者は「多彩なビールが相乗効果を生み、誘客拡大につながれば」と期待する。
クラフトビールの情報を集めるウェブサイト「Always Love Beer」によると、全国の醸造所は400カ所超。本県以外で20カ所を超えるのは飲食店併設型が主流の東京都、神奈川県と北海道だけという。
静岡県駿河区で6月から醸造を始めたウエストコーストブリューイングは、1996年から国内3カ所で個性的なビールを手掛けた名匠丹羽智氏(63)を責任者に迎えた。ホップを効かせた米国流ビールを主体に展開。トロピカルフルーツのような風味と濁った色合いが特徴の「ヘイジーIPA」に注力する。
周辺醸造所との情報交換を通じ、県内の技術底上げも目指す。オーナーのバストン・デレックさん(39)は醸造所や飲食店の”飲み歩き”を念頭に、「静岡はこれから『ビール観光』がキーワードになる」と見通す。
マウントフジブリューイング(富士宮市)は3月に開業した。富士山の湧水を活用し、甘い香りが漂う優しい口当たりのホワイトエールなど4種を定番とする。富士山本宮浅間大社の近隣で観光客も多いため、飲みやすさを重視。醸造責任者の会森隆介施設長(41)は「地元で長く愛されるビールを」と話す。
県内ではこのほか、静岡市葵区の飲食店「フィエスタ・ガルシア」が9月、同市清水区で醸造を開始する。
今夏、同市で開催した「第5回クラフトビール&ウイスキーフェア」の実行委員長中村大航さん(50)=ガイアフロー代表取締役=は醸造所増加の背景について「クラフトビールを提供する飲食店が増え、市場が安定的に広がった」とみる。その上で「イベント、醸造所、専門店の増加と情報発信で、県外の客も増えてほしい」と願う。(社会部・橋爪充)