産経新聞「味・旅・遊」コーナーにて、静岡蒸溜所をご紹介いただきました!
地元の魅力詰まったウイスキー 静岡の山間部「オクシズ」で醸す
静岡市は面積の8割、大半を山間部が占め、そこには温泉やワサビ、お茶の歴史的な産地など、知られざる名所がいくつもある。同市ではこの山間部を「奥静岡エリア」(オクシズ)と愛称をつけ、観光振興に力を入れている。そのオクシズで、静岡の風土に根差した自然と調和するウイスキーが造られている。訪ねてみた。
市の中心街から自動車で安倍川に沿って上流に向かう。新東名高速道路を越えると、周囲の景色は小高い山々が連なるのどかな山里に変わる。さらに奥へと進むと、木を基調にしたスタイリッシュな建物「ガイアフロー静岡蒸溜所」(静岡市葵区)が見えてくる。平成28年に完工し、同年からウイスキーの製造を始めた新しい蒸留所だ。
ウイスキーは原料となる麦芽などから麦汁を作り発酵させる。これを蒸留してできたニューメイク(ウイスキーの原液)をたるに詰め熟成する。完成までに長い時間を要するが、令和2年12月には第1弾となる「シングルモルト日本ウイスキー 静岡 プロローグK」(完売)を発売。その後は海外の原酒も一部使用するブレンデッドウイスキー「ガイアフローウイスキー ブレンデッドM」(3960円)もラインアップするなど、ウイスキー造りを本格化させている。
蒸溜所では、予約制の見学ツアーが設けられ、一連の製造作業の見学が可能だ。見学ツアーに参加してみると、製造工程の多くが手作業で、地元・静岡への強いこだわりに驚かされる。
水はもちろんだが、地元のスギで作った発酵槽も一部導入。一部の蒸留機では地元の間伐材を燃料に使用する。ガイアフローのサービス主任、下野真悠子さんによると「最近は静岡産の麦芽や酵母を使った仕込みも一部しており、将来的には静岡産のたるでの熟成も視野に入れている」という。
所内には蒸留機を眺めながら試飲できる試飲ルームを設置。見学ツアーの参加者限定でウイスキーを楽しめる。所内でウイスキーを販売しているが、シングルモルトウイスキーは生産量が少ないこともあり、ここで購入できない。
「酒販店ルートでは販売していますが、手に入れるのはなかなか難しい状況です。市内のバーなどでは置いているところもあります。まずは静岡の飲食店やバーでお楽しみいただければと思います」(下野さん)とのことだ。
そこで後日、静岡の市街地にあるバーで注文してみたが、しっかりとした麦芽感とかんきつを思わせる華やかな香りが絶妙で、本場英国の名門ウイスキーにも引けをとらない。
オクシズにはこのほか「山葵(わさび)栽培発祥の地」(同)があり、ワサビを使った料理が楽しめる飲食店などもある。さらに谷を進めば、約1700年前に開湯したとされる「梅ケ島温泉」(同)があり、気軽に楽しめる市営の日帰り温泉施設「黄金(こがね)の湯」(利用料金・大人700円)もある。
ワサビやお茶を育んできた南アルプスから流れ出る国内屈指の名水は、新たにウイスキーも生み出している。古くて新しいオクシズには、静岡市の秘められた魅力が詰まっている。
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