2015年3月31日(火) 読売新聞 朝刊 静岡面
ウイスキー 安倍川の水で
静岡・遊休地に蒸留所 活性化へ地元歓迎
水質に恵まれた安倍川上流部の静岡市・玉川地区の遊休地(約2ヘクタール)から、国産ウイスキーの新銘柄を生み出す計画が30日、発表された。洋酒輸入業「ガイアフロー」(静岡市清水区、中村大航社長)傘下の会社が、製造施設を建てる。NHKの連続テレビ小説「マッサン」を機にウイスキー人気が高まっている中で、地元住民も「活性化につながる」と歓迎している。
発表などによると、同社は9月から年明けにかけ、蒸留所と貯蔵庫を1棟ずつ建設する。来春には原酒を仕込み始め、2019年頃に商品を売り出す計画だ。施設は徐々に増築し、20年後の完成を見込む。将来は地場産品の販売を行う売店も設け、緑豊かな敷地内には遊歩道を巡らせる。
中村社長は12年に英スコットランドの蒸留所を見学し、地元でのウイスキー作りを志した。「安倍川の水質が良く、気温は発酵や熟成に最適。新東名高速道路の出入り口に近く流通にも便利」との理由で、玉川地区を見いだした。「安倍川の水のように澄んだ味の酒」を目指している。
サントリーなど大手酒造メーカーを除く地方のウイスキー生産者が。日本にはまだ秩父蒸留所(埼玉県)など数えるほどしかいない状況にも、中村社長は「可能性を感じた」という。
蒸留所の予定地では、玉川地区自治会連合会長の狩野宏さんによると「過去15年ほど、ミニサーキット場、茶園、宅地開発などの活用計画が、住民の反対や資金難で浮かんでは消えてきた」。だが、今回の蒸留所計画には、地元住民も「マッサンで話題になった北海道余市町も観光客でにぎわっていると聞く」と期待を膨らませているという。